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東京地方裁判所 昭和60年(ワ)11321号 判決

主文

一  被告は、原告に対し、別紙物件目録記載(1)の土地及び(2)の建物につき、東京法務局練馬出張所昭和五五年一二月二日受付第六四八〇五号抵当権設定仮登記に基づく本登記手続をせよ。

二1  被告は、原告に対し、別紙物件目録記載(1)の土地及び(2)の建物につき、東京法務局練馬出張所昭和五五年一二月二日受付第六四八〇六号所有権移転請求権仮登記に基づく、昭和六〇年一二月五日付代物弁済を原因とする所有権移転の本登記手続をせよ。

2  被告は、原告に対し、別紙物件目録記載(1)の土地及び(2)の建物を明渡せ。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告と訴外日本総業株式会社(以下「訴外会社」という。)は、昭和五四年七月二四日、東京都練馬区向山四丁目所在の不動産につき、訴外会社を売主、原告を買主とする売買契約を締結した。被告は、当時、訴外会社の代表取締役であった。

その後、原、被告間において、右契約の履行をめぐって争いが生じた。

2  原告は、被告との間で、昭和五五年一〇月三日、次の(一)ないし(三)のとおり合意(以下、まとめて「本件和解契約」ともいう。)した。

(一) 被告は、原告に対し、前記1の紛争の和解金として金二五〇〇万円を支払う。

(二) 被告は、原告に対する右和解金支払債務をもって消費貸借の目的とし、元金二五〇〇万円、無利息、遅延損害金年三〇パーセント、弁済期は内金一五〇〇万円につき昭和五五年一二月末日、内金は一〇〇〇万円につき昭和五六年八月末日とする。

(三) 被告は、右貸金債務を担保するため、被告所有の別紙物件目録記載(1)の土地及び(2)の建物(以下「本件不動産」という。)につき、原告のために抵当権を設定し、また、被告が右債務の弁済を怠ったときは原告が本件不動産の所有権を代物弁済として取得できる旨の原告を予約権利者とする代物弁済の予約をする。

3  原告と被告は、本件不動産につき、前項(三)の合意に基づき、東京法務局練馬出張所昭和五五年一二月二日受付第六四八〇五号の抵当権設定仮登記及び同出張所同日受付第六四八〇六号の代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権仮登記を経由した。

4(一)  原告は、被告が2項(二)の債務の弁済をしないので、被告に対し、昭和六〇年一〇月四日送達の本件訴状をもって、前記代物弁済予約を完結する旨の意思表示及び左記の内容の清算金見積額の通知をした。

(1) 清算期間経過時の物件の見積価額

〈1〉 別紙物件目録記載(1)の土地  一二〇〇万円

〈2〉 別紙物件目録記載(2)の建物   三〇〇万円

合計   一五〇〇万円

(2) 清算期間経過時の債権額

〈1〉 元本   二五〇〇万円

〈2〉 損害金  昭和五六年九月一日から完済まで年三〇パーセント

(3) 清算金の見積額

被告に支払うべき清算金はない。

(二)  よって、原告は、仮登記担保契約に関する法律二条により、昭和六〇年一二月四日の経過によって本件不動産の所有権を取得した。

5  被告は、本件不動産を占有している。

6  よって、原告は、被告に対し、本件不動産について、前記抵当権設定仮登記に基づく本登記手続を求めるとともに、所有権に基づき前記所有権移転請求権仮登記に基づく昭和六〇年一二月五日付代物弁済を原因とする所有権移転登記手続及び明渡を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実のうち(三)の合意をしたことは認める。

3  同3の事実は認める。

4  同4(二)は争う。

5  同5の事実は認める。

6  同6は争う。

三  抗弁

1  (和解契約の強迫による取消し)

(一) 原告は、東京地方検察庁に対し、昭和五五年七月、前記不動産売買に関し被告が原告から金員を騙取したとして詐欺罪を理由に告訴した。

(二) 被告は、取調べの際、担当検察官から原告と示談するように強く迫られた。

また、被告は、原告代表者から、示談に応じるように強く迫られた。

(三) その結果、被告は、畏怖心に駆られ、刑事訴追を免れるため、本件和解契約に応じたものである。

(四) 被告は、原告に対し、遅くとも、昭和六一年七月五日送達の内容証明郵便をもって本件和解契約を強迫によるものとして取り消す旨の意思表示をした。

2  (権利の濫用)

原告の被告に対する本件不動産についての抵当権設定仮登記に基づく本登記請求は、原告に何等の利益をもたらさず、被告を苦しめるためにのみなされているもので権利の濫用として許されない。

四  抗弁に対する認否

1(一)  抗弁1(一)の事実は認める。

(二)  同(二)の各事実は否認する。

(三)  同(三)の事実は否認する。

(四)  同(四)事実は認める。

2  抗弁2は争う。

第三  証拠(省略)

別紙

物件目録

(1) 所在    東京都練馬区貫井四丁目

地番    三四五六番五

地目    宅地

地積    三九・六六平方メートル

(2) 所在    東京都練馬区貫井四丁目三四五六番地四、同番地五

家屋番号  三四五六番四の一

種類    居宅

構造    木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建

床面積   一階 三九・七一平方メートル

二階 二三・一八平方メートル

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